業界の競争環境を分析する「ファイブ・フォース」
経営コンサルタントを名乗る実務のたたき上げ中年オヤジ(50歳)が、経営の原理原則を学ぶべくMBA(大学院)に通うことを決意し、日々の学びと気づきを不定期でつぶやきます。
- MBA(経営学修士)での学びを手軽に追体験できます。
第七回目のテーマは…業界の競争環境を分析するファイブ・フォース
今回のテーマでもある、ファイブ・フォースを考案したマイケル・ポーターが『競争の戦略』(ダイヤモンド社、1980年)を世に出してから半世紀近くになりますが、競争の戦略の視点は今も多くの企業に活用され、経営戦略の基本的フレームワークとして世界中で認知されています。
企業が競争優位を獲得するために、ファイブ・フォースを活用して業界の競争環境を知ることは、戦略を選定する上で必須な手順と言えます。
ポーターは業界の競争環境を決定する要因として、以下の5つを挙げ、それぞれを分析・理解することで、自社の経営環境を正しく理解できると考えています。
- 新規参入者(新規参入の脅威)
- 競争業者(既存競合の脅威)
- 代替品(代替品の脅威)
- 買い手(買い手の交渉力)
- 売り手(売り手の交渉力)
一般的な業界分析を考えると、競争業者(いわゆる競合)ばかりに目が行きますが、図に示すように実際にはそれ以外の様々な脅威に囲まれていることがわかります。
5つの競争要因と、そこから生まれる圧力が、その業界の競争環境を決定すると考えるのが、ポーターのファイブ・フォース分析です。
ここからは5つの競争要因を簡単に説明します。
1 新規参入の脅威
新規参入の脅威とは、業界に新たに参入する企業の可能性のリスクです。
新規参入が容易なほど業界の競争は激化します。例えば、設備投資に多額の資金が必要な製造業界の参入障壁は高く、初期投資を必要としないサービス業界の参入障壁は低いと言えます。
ちなみに参入障壁とは、新規参入者がその業界に参入する際の障害を示し、代表的なものとして以下の項目が考えられます。
- 規模の経済(大量生産)のメリットをもつ先行企業の有無
- 参入予定の商品、製品の差別化ポイントの有無
- 新規参入のための投資コストの有無
- 既存事業者からの報復(圧力)措置の有無
2 競争業者の脅威
業界内の競争環境は、競合間の敵対関係が最も大きく影響します。
ポーターは8つの要因を掲げ、競争業者間の分析方法を示しています。
- 同業者の数と、似た規模感の会社の割合 ⇒多ければ競争激化
- 業界市場の成長速度 ⇒遅ければ顧客争奪による競争激化
- 固定コストや在庫コスト ⇒高ければ資金回収のために競争激化
- 製品の差別化状況 ⇒差別化なければ値引きによる競争激化
- 市場成長以上の製造能力増強 ⇒供給過剰からの値崩れによる競争激化
- 業界内の企業の多様性 ⇒業界ルールが構築されず競争激化
- 戦略的な賭けをする企業の存在 ⇒業界混乱による競争激化
- 撤退障壁の大きさ ⇒特定業界のため撤退企業数が少なく競争激化
3 代替品の脅威
代替品には、大きくは2つの種類があります。
- 形態は異なるが機能は同じ製品やサービス
- 形態も機能も異なるが目的が同じ製品やサービス
代替可能な製品やサービスの出現は、業界外から現れるため、代替品の威力が強くなると、ターゲットとしてきた顧客の中から、その代替品で満足する顧客層が現れ、業界内の顧客数は減り、競合間の競争は激化します。
代替品の脅威を測定するためには、自社の業界が扱っている製品やサービスの代替品となるものを見つけだし、以下の点を検証することが重要です。
- 形態、機能、目的が同じ代替品の存在
- 現在の製品、サービスとのコストパフォーマンス比較
- 代替品を生産する企業の資本力
4 買い手の交渉力
買い手とは、業界から製品やサービスを購入する顧客を指します。
買い手の交渉力が強いと、値引きを要請されたり、競合同士で競わせたりしますので、
結果として業界の競争が激化します。
買い手の交渉力が強くなる要因として、ポーターは次の6つを指摘しています。
- 売り手に対して買い手の数が極端に少ない、いわゆる買い手市場
- 該当する製品、サービスが買い手のコストに占める割合が高い
- 取引先を変更する場合のコスト負担や切替リスクが少ない
- 該当する製品、サービスが買い手にとって重要でない
- 買い手が製品、サービスについて十分な情報をもつ
- 消費者の購入決定に買い手が大きな影響力をもつ(販促活動の決定権)
5 売り手の交渉力
売り手とは、その業界に製品やサービスを提供する供給業者のことです。
最近では、協力会社などと呼ばれるケースもあります。
売り手の交渉力が高まるケースとしては、以下の5つが考えられます。
- 買い手の業界の企業数が多く、売り手の数が少ない
- 買い手の業界が売り手にとって重要な顧客層でない
- 売り手の製品が買い手の事業にとって重要な仕入品である
- 差別化された製品、サービスであり、他の売り手に変更するとコストが増える
- 売り手が川下市場(買い手市場)に参入する意思がある
上記5つの項目は、業界の競争環境を決定する最も大きな要素です。
それぞれを分析し、自社の業界を取り巻く環境を把握し、最も有利なポジションを見つけ出すことが重要です。
製品・サービスの競争優位を確立させるために、ファイブ・フォースを活用して自社の業界環境を一度検証してみてはいかがでしょうか?
社長!本当に経営、できていますか?